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JPMA/PhRMA/EFPIA 共同記者会見「骨太の方針」、「医薬品産業ビジョン」策定に向けての提言

JPMA/PhRMA/EFPIA 共同記者会見「骨太の方針」、「医薬品産業ビジョン」策定に向けての提言

JPMA/PhRMA/EFPIA 共同記者会見
「骨太の方針」、「医薬品産業ビジョン」策定に向けての提言

米国研究製薬工業協会(PhRMA)は2021年5月17日(月)、日本製薬工業協会(JPMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)とともに、オンラインにて共同記者会見を開催しました。これに先立って同日に行われた、厚生労働省・内閣府・文部科学省・経済産業省との「革新的医薬品創出のための官民対話」にて、3団体は「2021年 骨太の方針」や「医薬品産業ビジョン 2021」策定に向けた提言をしており、その内容を報道関係者に向けて説明しました。

JPMAの中山讓治会長からは、昨年から続いている新型コロナウイルス感染症の各国のワクチン開発に触れながら、「海外では国防の観点からも、新技術に投資が行われてきており、今回のパンデミックにも迅速に対応できた。日本では、MERSのワクチン研究などが行われていたが、予算がカットされ凍結していた。感染症への取り組みは平時から備えることが必要。そのためには、規制を見直し、対策を整備することが不可欠だ」と強調しました。
また、先日米国政府が“新型コロナワクチンに関わる知的財産の放棄(TRIPS Waiver)”を支持したことをふまえ、JPMAは米国政府とは意見が異なる立場を改めて明確にしたうえ、知的財産の放棄は「新型コロナワクチン不足の解決にならないばかりか健康被害などの懸念がある。今後も、知的財産を維持した形で国際的な協力を推進していくべき」だと主張しました。
また、製薬産業は、国民生活を支える「基盤産業」であると同時に、ポストコロナの日本経済を牽引する「成長産業」であるとし、成長を支える産業政策の必要性を訴えました。さらに、Society 5.0時代において「ライフサイエンス分野は将来性がある」と言及し、健康医療ビッグデータの構築が必要であること、日本は電子カルテ等の整備が遅れていること、「デジタルトランスフォーメーション(DX)により研究開発のスピードや成功確率が向上するなど創薬の効率がアップし、コストは低下する。いち早く患者さんに薬を届けることができるようになる」と述べました。
また、日本の医薬品市場をグローバル企業が投資を優先する市場とするために、欧米先進国と同様に特許期間中の新薬の薬価が維持される仕組みとすべきであり、新薬の価値が適切に評価される薬価制度が欠かせないことを強調し、締めくくりました。

続いて、PhRMAのジェームス・フェリシアーノ在日執行委員会委員長が登壇し、「イノベーションを推進する政策が不可欠だが、日本の政策は医薬品への投資に悪影響を与えている。研究開発投資を見ても、拡大している世界の流れと逆行しており、日本市場の競争力が低下していく」と発言し、今後「透明性と予見性がある薬価算定ルールを導入し、新薬を適正に評価していただきたい。また、リソースを効果的に配分する医療制度の改革が必要」だと訴えました。2009年の新薬創出等加算導入決定など、イノベーション推進政策が打ち出された直後は投資が増加したが、2015年以降、薬価緊急引き下げや、薬価抜本改革・基本方針4大臣合意の他、2019年に費用対効果評価制度導入(日本版HTA)され、2020年の毎年薬価改定対象範囲決定などの政策が打ち出される度に投資が縮⼩する影響が生じていると指摘し、2010年代の半ば以降に、治験数が日本で停滞しているのに対して中国で急増していることに対する懸念を示しました。
また、従来のワクチンが開発に8~10年かかっていたのに対し、新型コロナウイルスワクチンが12~18カ月の短期間で開発に成功したことに触れ、「これは当たり前のことではない。研究開発投資と技術の蓄積、さらに政府の後押しがあってこそなし得た」と説明し、「もし、あと6年間待たなければワクチンが手に入れられないとしたら、日本経済はどうなるか」と述べ、イノベーションを重視する政策の重要性を指摘しました。

最後に、EFPIA Japanよりハイケ・プリンツ会長が登壇されました。国民皆保険の持続とイノベーションの推進のバランスを保つことが難しくなっていると指摘され、日本市場の成長性と予見性が低下することで、日本に対する投資の優先順位が下がっている現状についてふれました。今後、革新的な医薬品にアクセスできない患者さんが増えることを懸念したうえで、「日本は今後も新薬開発の先進国であるべき」だと話されました。そのためには、研究開発・薬事規制環境の改善が必要だとし、たとえばアジアの治験データを活用することも不可能でない例を挙げながら、国際共同試験成績の受け入れを促進することを提案されました。最後に、2016年以降の度重なる制度の変更にふれながら、「薬価制度の予見性を担保していただきたい」と強く訴えられました。

3団体からのプレゼンテーションの後、パネルディスカッション(モデレーター:新時代戦略研究所 梅田一郎理事長)が行われ、製薬産業は一般には余りよく理解されていないのが現状で、医薬品産業ビジョンが策定される機会を捉え、官民を挙げて国民の理解を深める取り組みを行うことが大切であると3団体から表明しました。
イノベーションを重視し適切に評価する政策の重要性や、欧米諸国と同様に、特許期間中も新薬の薬価を維持する制度の必要性が強調され、会見は締めくくられました。