2011年5月24日
医療研究者により、様々な疾病が女性に多く発生する原因が解明されており、骨粗しょう症や多発性硬化症、うつ、関節リウマチ、加齢性黄斑変性など、男性に比べ女性において頻発する疾病に対する治療薬の開発に活かされています。
本日、米国研究製薬工業協会(Pharmaceutical Research and Manufacturers of America 、以下PhRMA)が発表したレポートには、現在、女性特有の、あるいは女性に頻発する疾病を対象とした851種の治療薬が開発段階にあり、そのうち、女性特有のがん治療薬の数は139種、女性の罹患率が男性の3倍である自己免疫疾患の治療薬に関しては110種が含まれています。これらの治療薬はすべて臨床試験中、または米食品医薬品局(FDA)による承認を待つ、いずれかの段階です。
PhRMAのジョン・J・カステラニ理事長兼CEOは次のように述べています。「つい数十年前まで、男性に対して効果の高い治療薬は、ほぼすべての女性にも効果が高いという基本的な前提がありました。しかし、これまで明らかではなかった男女間での僅かな差に関する研究が進み、男女双方にとって新たな、より効果の高い治療法の実現が大いに期待できます。」
米国人女性の約90%が、紅斑性狼瘡、偏頭痛、繊維筋痛で苦しんでいます。女性は特定の疾患に罹患しやすいだけでなく、症状が男性と異なることがあります。例えば男性の心臓発作の典型的な症状は、最初に胸の痛みを訴え、腕にまで痛みが広がります。現在でも多くの医師がこれをもとに診断を行っていますが、女性は、消化不良、倦怠感、吐き気などの症状が出ることがあります。
その他、新薬開発の研究者が考慮すべき点として、特定の物質に対する代謝の仕組みが男女間で異なる可能性が挙げられます。例えば、研究によって女性は男性に比べてニコチンの代謝が早いことが解明されたため、低用量禁煙ニコチン・パッチを女性に処方しても男性と同等の効果が期待できない可能性があることがわかりました。
最も有望な研究領域の一つが、自己免疫疾患です。これは人体の免疫システムが、体の特定の部位を誤って異物と認識し、攻撃するという疾患です。約2,350万人の米国人が多発性硬化症や関節リウマチなどの自己免疫疾患を患っており、その大多数が女性です。
また、ストレスに対する男女差を更に理解することは、自己免疫疾患や心因性疾患(うつ、不安症など)の治療をする際に役立つことがあります。
グラクソ・スミスクライン(GSK)の医薬品開発リーダーであるロレイン・フィッツパトリック医学博士(Lorraine Fitzpatrick, M.D.)は次のように述べています。「例えば、女性の体は、高レベルのサイトカイン(神経システムから分泌される細胞)を産生することでストレスに反応します。」また、自己免疫疾患の解明および治療の進歩について、「女性の健康において近年達成した偉業のひとつです」と述べています。
また、メハリー医科大学の学長チャールズ P. モートン医学博士(Charles P. Mouton, M.D.) も、特に有望な研究領域として自己免疫疾患をあげています。モートン学長は、特定の疾病罹患率が女性に多い原因の仮説として、「暴力にさらされること」が最近明らかになったと述べています。モートン医学博士が学長をつとめるメハリー医科大学は、少数民族や女性特有の健康状態や治療効果の研究で知られており、「暴力にさらされることが健康面にどのような悪影響を及ぼすのかを解明すべく取り組みを始めた段階です」と、モートン学長は述べています。
サノフィ・アベンティスで多発性硬化症プロダクトの専門部署を統括するアニタ・バレル氏(Anita Burrell)は「自己免疫疾患のなかでも、多発性硬化症(男性に比べて女性の罹患率が2~3倍)の研究において大きな進歩がありました」と述べています。現在、多発性硬化症の治療薬の38種が開発段階にあります。生物薬剤学研究には、大きな予算リスクと不成功率の高さが伴う一方、今後10年の間に、劇的に効果が高い新薬が数多く発売されるだろう、とバレル氏は予測しています。
バレル氏は「病気の治療において私たちは全く新たな局面に向かっており、近い将来、こうした疾病の寛解が実現するはずです。イノベーションが現在のペースで続けば、私たちの子供たちの世代には、より長期的な寛解が可能となるでしょう」と述べています。
フィッツパトリック、モートンの両博士は、骨粗しょう症の治療研究における進歩にも大きな期待を寄せています。同疾病および関連症状の予防や治療薬として現在、生物薬剤学研究の企業は22種の治療薬を開発されています。骨粗しょう症は、骨の脆弱化により骨折のリスクが高まる病気で、米国では男性が200万人、女性は800万人が罹患しているといわれています。
フィッツパトリック博士は次のように述べています。「過去20年間の研究により、数多くの効果的な治療薬が開発されましたが、まだ大きな改善の余地があります。今後の研究は単なる骨浸食予防だけでなく、骨の形成が大きな研究テーマとなります。」
「女性の健康全般に関する研究で、近年目覚ましい進歩が見られました。今後が非常に楽しみです。」
関連動画:http://www.youtube.com/watch?v=ppiculo5b6c (英語のみ)
レポートへのリンク : http://www.phrma-jp.org/archives/data/report/other-reports/110524-1100.php
開発中の女性が罹患しやすい疾患向け治療薬:
http://www.phrma-jp.org/archives/pdf/others/MedsDevWomenReport-ENG.pdf (2ページ以降)
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PhRMAは、米国で事業を行なっている、主要な研究開発志向型製薬企業とバイオテクノロジー企業を代表する団体です。加盟企業は新薬の発見・開発を通じて、患者さんがより長く、より健全で活動的に暮らせるよう、先頭に立って新しい治療法を探求しています。加盟企業の新薬研究開発に対する2010年の投資額は約494億ドルで、製薬業界全体の投資額は過去最高の674億ドルに達しました。
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