2021年2月18日
米国研究製薬工業協会
~コロナ禍における健康・医療に関する意識・実態調査~
コロナ禍での医療に対する国民の意識・関心は高まり
約8割の回答者が国・自治体に「医療」への注力を期待
~中でも最も注力すべきは「医療/ワクチン開発」と7割以上が回答~
米国研究製薬工業協会(PhRMA:Pharmaceutical Research and Manufacturers of America)は、全国の20歳以上の 一般生活者、患者さん各1,236名の計2,472名を対象に、新型コロナウイルス感染拡大下での健康・医療に関する意識や実態、医療政策や治療薬とワクチン開発に対する期待を把握することを目的に、「コロナ禍における健康・医療に関する意識・実態調査」を実施しました。(調査期間:2020年10月30日~11月2日)
この調査の結果、約8割の国民が、国や自治体が注力すべき新型コロナウイルス感染症対策は「医療」であると回答し、医療分野の中でも、特に「治療薬/ワクチンの開発」を最も多く上げています。また、製薬企業に対しても「治療薬/ワクチン開発の促進」に期待がよせられており、こうしたイノベーションへの投資に対しては、約7割の人が、「自己負担が増えたとしても、日本の医療の予算を増やした方がよい」と回答しています。
主な調査結果は下記のとおりです。またこの結果を踏まえて、東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 公共政策研究分野 教授/内閣官房新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員 武藤 香織先生からも以下(P2)にコメントをいただいています。
主な調査結果*本文中の数値は四捨五入しています。
【一般生活者/患者さん対象】
【患者さん対象】
東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 公共政策研究分野 教授/内閣官房新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員 武藤 香織先生
今回PhRMAが調査を実施した時期は、一日の陽性者数が700-800人台であり、2回目の大きな流行を乗り越え、社会経済活動が再開されるなか、流行が上昇に転じる直前であったことを踏まえる必要があります。回答者の方々は、新型コロナウイルス感染症との付き合い方に慣れ、いつまで続くのかといううんざりした気分や、再流行が予想される冬に向けての不安もないまぜになっていた頃ではないでしょうか。
そのような時期に、市民が国や自治体に対して何を期待しているかを調べた結果、多くの方々が最優先事項として「医療対策」を挙げ、特に治療薬やワクチン開発への期待が高いことが明らかになりました。これと呼応する形で、製薬企業に対して求めることとして最も多かったのが、「治療薬やワクチンの開発の促進」(61.9%)となっており、感染拡大の収束のためには治療薬やワクチンの開発が最優先と考えている人が多いことがわかりました。
【治療薬やワクチン開発の迅速化への期待と現実のギャップ】
治療薬やワクチンの開発を迅速化するために必要な施策では、開発費用の支援(68.5%)への賛同が多く集まりましたが、製造設備への支援(54.8%)や承認手続きの簡略化、迅速化(52.1%)は一般の人々にとって想像しづらいものだったかもしれません。実際に、こうした施策に必要な予算は、令和2年度第三次補正予算ならびに令和3年度予算でも一定の考慮がなされるものと思いますが、回答者の約7割の方々が、国民の負担増を前提とした医療に関わる予算増加を容認されていたことが印象に残りました。
一方で、6割以上の人が新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンが「2年未満」の間に開発される、と予想されていました。期待値の高さがうかがえますが、医薬品開発の実態と人々の期待とのギャップを改めて感じました。
通常、治療薬やワクチン開発には、数年以上の年月をかけて安全性や有効性を確認します。特に、多数の健康な人々が接種するワクチン開発は、さらに時間を要します。しかし、現在、世界中で製薬会社を中心に、産学官が連携し、総力を挙げて新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンの研究開発が進められています。幸いなことにいくつかのワクチンが早期に開発され、すでに接種が開始されましたが、効果と安全性のバランス、安定供給のための体制整備など、取り組むべき課題も多く存在します。薬の副作用やワクチンの副反応も、大きな話題になりやすい時期です。人々が過度な期待と落胆を抱かず、できるだけ冷静に事態を見守れるよう、治療薬やワクチン開発に関して、産学官で連携して社会とのコミュニケーションを丁寧に図ることが重要だと考えます。
【通院回数減少の要因解明と遠隔/オンライン診療の普及】
患者さんの回答では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、約2割の方が通院回数を減らしたという結果が見られました。同時に、遠隔診療/オンライン診療に変更した患者さんの割合は、わずか3.7%にとどまりましたが、この調査では、その理由は明らかになっていません。また、通院回数が減った背景には、感染への不安による受診控えがあったかもしれませんが、院内感染や患者急増によって余裕を失っている医療機関側の事情も影響を与えたかもしれません。慢性疾患で、定期的に通院している患者さんほど、医療機関の事情を熟知しており、医療従事者の負担にならないようにと配慮された可能性も考えられます。
しかし、自己判断で通院回数を減らすことは危険を伴いますので、主治医に通院頻度について相談していただきたいと考えます。また、医療政策の面からは、患者さんの病状に適している場合には、遠隔診療やオンライン診療など、利便性の高い診療体制が普及するよう、診療報酬の面からも考慮すべきだと考えます。
【革新的な医薬品開発に伴う課題の解決に向けて】
この調査が明らかにしたように、新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、革新的な医薬品開発への社会的な注目が集まっている状況ですが、実際には様々な課題を抱えています。倫理的な観点からは、リスクの高い臨床試験・治験が必要になりますが、どのような選定方針のもとで被験者を募集し選定すべきか、インフォームド・コンセントで期待されるベネフィットの説明を一切すべきでないのかなど、より慎重な議論が必要です。難しい研究デザインの策定にあたり、患者・市民の視点からの意見も反映される仕組みを普及すべきです。
また、近年、日本では、画期的な医薬品が承認された際、社会保障費削減を目的に開発にかかる費用や期間を考慮しても厳しい薬価が設定され、しかも頻繁に価格の見直しが行われるため、製薬会社は開発費用を回収するのが難しくなりつつあると聞きます。しかし、高額の医療費を要する品目に対して、必ずしも費用対効果だけで判断すべきではありません。社会全体でどのように負担をしていくのか、医療技術評価における倫理的、社会的影響等に関する観点の評価手法の議論を活発にすべきだと考えます。
なお、調査結果の詳細は別紙資料と以下をご覧ください。
■米国研究製薬工業協会(PhRMA)
PhRMAは、米国で事業を行なっている主要な研究開発志向型製薬企業とバイオテクノロジ―企業を代表する団体です。加盟企業は新薬を発見・開発し、患者さんがより長く、より健全で活動的に暮らせるよう、努力しています。加盟企業の新薬研究開発に対する投資額は、2000年からの累計では1兆ドル以上に達し、2019年単独でも推定830億ドルになりました。
【本件に関するお問い合わせ】
米国研究製薬工業協会(PhRMA)広報事務局
(株式会社ジャパン・カウンセラーズ内)
TEL:03-3291-0118 FAX:03-3291-0223
E-mail:phrma_pr@jc-inc.co.jp