日時:2016年12月8日(木)午後1:30~4:00
場所:東京都内
PhRMAは去る2016年12月8日に“日本そして世界における今後の認知症対策について”をテーマに、日本医師会とともに、4度目となる共催シンポジウムを開催しました。
高齢化最先進国の日本は、認知症対策におけるリーダーシップとその動向が世界的に注目されています。そうした現状を背景に今回は、政策担当者、医療従事者、治療薬を開発する製薬企業関係者、そして認知症当事者をサポートする内外の介護者等関係者間で、現状や課題を共有し、ともに今後の対応策を探ることを目的としました。
当日は日本医師会 横倉義武会長(世界医師会次期会長)による「認知症の人ができるだけ社会に関わり続けながら、尊厳を失うことなく、住み慣れた地域で穏やかに過ごすことのできる環境を広く整えるために、本シンポジウムが、全ての人にとってやさしい『まちづくり』の着実な一歩となることを期待している」という開会のメッセージで始まり、基調講演では、認知症の“政策”、“介護”、“医療”、“研究開発”に関わるそれぞれの担当者が、現状の課題や取り組みについて講演しました。
厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室の大田秀隆認知症対策専門官からは「認知症施策の推進について」というテーマのもと、国家戦略として策定された「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」の概要や、WHO、G7など国際社会における認知症関連の動きへの日本の参画状況など、政府の取り組みについて紹介がありました。
続いて、認知症の人たちを支える介護者の発表として、日本からは公益社団法人認知症の人と家族の会鈴木森夫常任理事、海外からはインドネシアから招聘した国際アルツハイマー病協会クスマデウィ・DY スハルヤ アジア太平洋地域ディレクターがそれぞれ講演しました。鈴木森夫常任理事からは、同会が認知症施策の実現・充実に向けて果たしてきた役割や、2017年に京都で予定されている国際アルツハイマー病協会と同会主催による国際会議について紹介がありました。またDY スハルヤディレクターは、認知症に関連する各種データ(世界の推定人数、コスト等)、認知症が当事者や介護者に及ぼす影響、認知症の人のケアを行う上で重要な要素などを説明し、インドネシアで展開されている政府、地域行政、メディアを巻込んだ啓発活動や教育活動について発表しました。
鈴木邦彦日本医師会常任理事は、同会の認知症に対する取り組み、そして、認知症ケアにおいて、地域のかかりつけ医に求められる役割とその重要性について発表し、同会による研修制度、昨年末に発行された『かかりつけ医のための認知症マニュアル』や、かかりつけ医に向けた認知症高齢者に係る診断書作成時に参考となる資料作成を検討していることなど、具体的な活動内容について紹介しました。
そして基調講演の最後となる、MSD株式会社グローバル研究開発本部クリニカルリサーチ中枢神経領域 新野伊知郎部長からは、「革新的な認知症(アルツハイマー)治療薬の開発状況」と題し、治療薬開発の現状、最新の知見、今後の課題についての、発表がありました。
非常に活発に研究開発が行われていること、早期診断のためにはバイオマーカーが不可欠であり、修飾疾患薬には早期診断・早期介入が必要であること、また、今後の新薬開発においては、産官学のさらなる協働が非常に重要となることなどを説明しました。
パネルディスカッションでは、日本医療政策機構の栗田駿一郎氏をモデレーターとして、基調講演を行った5名がパネリストとして登壇しました。
「早期」という観点から、認知症の診断、治療、ケアに対する現在の課題や展望、現在取り組んでいる対策について、また「早期診断」が「早期絶望」にならないためにはどうすれば良いかなどを、それぞれの立場から発言をいただきました。またフロアからは、自覚や疑いをもっていない当事者本人や独居の高齢者の受診促進、認知症に対する公的支援の必要性についてなど、具体的な質問が多数挙がり、活発な議論が交わされました。
本シンポジウムには、医療行政に関わる国会議員、患者団体、主要マスメディア、医薬品関係者など100名を超える聴衆が参加しました。
【シンポジウム模様】
横倉 義武 |
大田秀隆 |
鈴木森夫 |
クスマデウィ・DY スハルヤ |
鈴木 邦彦 |
新野 伊知郎 |
栗田 駿一郎氏 |
パネルディスカッション風景 |
パトリック・ジョンソン |